統計的思考 ―再現性の危機を超えて―

Russell A. Poldrack(著)/神谷 之康(訳)

Russell A. Poldrack(著)/神谷 之康(訳)

定価 4,950 円(本体 4,500 円+税)

A5判/320ページ
刊行日:2025年11月01日
ISBN:978-4-254-12308-1 C3041

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内容紹介

Russell Poldrack, Statistical Thinking: Analyzing Data in an Uncertain World (2023) の翻訳.統計学の基礎を実データによる豊富な例で解説.機械学習や再現可能性などの視点も取り入れ現代的に理解.実際の現場で正確に使うために.〔内容〕データの取り扱い/要約/可視化/フィッティング/確率/サンプリング/他

編集部から

https://statsthinking21.org

※原著者によるサポートページ

[訳者あとがきより抜粋]
 2024年の夏,原著者のラッセル・ポルドラック(Russell A. Poldrack)氏が京都の私の研究室を訪れた際,「enshittification」という言葉が話題になった.これは,「クソ(shit)みたいになること」を大げさに名詞化したもので,SNSなどのウェブプラットフォームが,当初はユーザーに優れたサービスを提供していたにもかかわらず,徐々にビジネス顧客や株主の利益だけを追求するようになり,質が低下していく現象を指すのに使われている.この概念が興味深いのは,研究の世界でも「論文のenshittification」が進行しているからだ.信頼できる知識を生み出すことを目指していたはずの学術研究が,現在では論文を発表することが目的と化し,統計手法は形骸化して有意差を出すことのみに血道を上げる状況になっていないだろうか.
(中略)
 孔子は「六十にして耳順う」と言った.これは,年を重ねることでさまざまな意見や考え方を素直に聞けるようになるという意味であろう.統計学は,データをねじ伏せて自分の望む答えを出させるための道具ではない.事前知識や仮定を持ちつつも,データの声に素直に耳を傾けることが重要である.また,孔子は「七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず」とも言った.これは,深い知恵や徳があれば,心の赴くままに行動しても道を外れることがないという意味であろう.統計学の本質は,硬直的な「作法」を機械的に適用することではない.研究者は自由に問いを立て,創造的に分析手法を構築し,新しいアプローチを試みるべきである.それぞれの研究分野が積み重ねてきた知見と統計的思考の本質を理解し,データから謙虚に学ぶ境地に達すれば,自由に分析を行いながらも信頼できる知識を生み出すことができる.そのような境地を目指したいものである.

目次

1.序論
 学習目標
 1. 1 統計的思考とは何か
 1. 2 統計学への不安に対処する
 1. 3 統計学に何ができるか
 1. 4 統計学のビッグアイデア
 1. 5 因果と統計
 推薦図書・論文
 練習問題
2.データの取り扱い
 学習目標
 2. 1 データとは何か
 2. 2 離散的測定と連続的測定
 2. 3 良い測定とは
 推薦図書・論文
 練習問題
 付録
3.データの要約
 学習目標
 3. 1 なぜデータを要約するのか
 3. 2 表を使ってデータを要約する
 3. 3 理想化された分布の表現
 推薦図書・論文
 練習問題
4.データの可視化
 学習目標
 4. 1 なぜデータの可視化が重要なのか
 4. 2 プロットの解剖
 4. 3 優れた可視化の原則
 4. 4 人間の限界への対応
 4. 5 その他の要因の補正
 推薦図書・論文
 練習問題
5.データへのモデルのフィッティング
 学習目標
 5. 1 モデルとは何か
 5. 2 統計的モデリングの例
 5. 3 モデルの改善
 5. 4 良いモデルとは何か
 5. 5 モデルが良すぎることはあるか
 5. 6 平均を使ったデータの要約
 5. 7 中央値を用いてデータを頑健に要約する·
 5. 8 最頻値
 5. 9 変動性:平均はデータにどの程度フィットしているか
 5. 10 シミュレーションを使って統計を理解する
 5. 11 Z ス コ ア
 練習問題
 付録
6.確率
 学習目標
 6. 1 確率とは何か
 6. 2 確率はどのように決定するのか
 6. 3 確 率 分 布
 6. 4 条件付き確率
 6. 5 条件付き確率の計算
 6. 6 独立性
 6. 7 条件付き確率の反転:ベイズの定理
 6. 8 データからの学習
 6. 9 オッズとオッズ比
 6. 10 確率とは何を意味するのか
 推薦図書・論文
 練習問題
 付録
7.サンプリング
 学習目標
 7. 1 サンプリングの重要性
 7. 2 どのようにサンプリングするのか
 7. 3 標 本 誤 差
 7. 4 平均の標準誤差(SEM)
 7. 5 中心極限定理
 推薦図書・論文
 練習問題
8.リサンプリングとシミュレーション
 学習目標
 8. 1 モンテカルロシミュレーション
 8. 2 統計学におけるランダム性
 8. 3 乱数の生成
 8. 4 モンテカルロシミュレーションの使用·
 8. 5 統計学のためのシミュレーション:ブートストラップ
 推薦図書・論文
 練習問題
9.仮 説 検 定
 学習目標
 9. 1 帰無仮説検定(NHST)
 9. 2 NHST の例
 9. 3 NHST のプロセス
 9. 4 有意な結果とは何を意味するのか
 9. 5 現代における NHST:多重検定
 推薦図書・論文
 練習問題
10.効果の定量化と研究のデザイン
 学習目標
 10. 1 信 頼 区 間
 10. 2 効果量
 10. 3 統計的検出力
 推薦図書・論文
 練習問題
11.ベイズ統計学
 学習目標
 11. 1 生成モデル
 11. 2 ベイズの定理と逆推論
 11. 3 ベイズ推定を行う
 11. 4 事後分布の推定
 11. 5 事前分布の選択
 11. 6 ベイズ仮説検定
 推薦図書・論文
 練習問題
 付録
12.カテゴリカルな関係のモデリング
 学習目標
 12. 1 キャンディーの色:例
 12. 2 カイ二乗検定
 12. 3 分割表と二元配置検定
 12. 4 標準化残差
 12. 5 オ ッ ズ 比
 12. 6 ベイズファクター
 12. 7 2 × 2 の分割表を超えたカテゴリカル分析
 12. 8 シンプソンのパラドックスに注意
 推薦図書・論文
 練習問題
13.連続的関係のモデリング
 学習目標
 13. 1 ヘイトクライムと所得格差:例
 13. 2 共分散と相関
 13. 3 相関と因果関係
 推薦図書・論文
 練習問題
 付録
14.一般線形モデル
 学習目標
 14. 1 一般線形モデル
 14. 2 線 形 回 帰
 14. 3 より複雑なモデルのフィット
 14. 4 変数間の相互作用
 14. 5 線形予測を超えて
 14. 6 前提条件の確認
 14. 7 「予測」の本当の意味とは
 BOX初期の統計学者の複雑な遺産
 推薦図書・論文
 練習問題
 付録
15.平均の比較
 学習目標
 15. 1 単一の平均の値の検定
 15. 2 2 つの平均の比較
 15. 3 線形モデルとしての t 検定
 15. 4 対応のある観測値の比較
 15. 5 2 つ以上の平均の比較
 練習問題
16.多変量統計
 学習目標
 16. 1 多変量解析の種類
 16. 2 多変量データの例
 16. 3 多変量データの可視化
 16. 4 クラスタリング
 16. 5 次 元 削 減
 推薦図書・論文
 練習問題
17.実践的な統計モデリング
 学習目標
 17. 1 統計モデリングのプロセス
 17. 2 データ前処理
 17. 3 統計モデルの特定
 17. 4 例 1:自制心と逮捕歴
 17. 5 例 2:マスク着用と顔を触ること
 17. 6 例 3:喘息と大気汚染
 17. 7 例 4:窒素肥料と土壌耕起に対する植物の反応
 17. 8 助けを得る
 練習問題
18.再現可能な研究の実践
 学習目標
 18. 1 私たちは科学がどのように機能すると考えているか
 18. 2 科学は実際に(時に)どのように機能するか
 18. 3 科学における再現性の危機
 18. 4 疑わしい研究実践
 18. 5 再現可能な研究の実践
 18. 6 再現可能なデータ分析の実践
 18. 7 結論:より良い科学を実践するために
 推薦図書・論文
 練習問題
索 引

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