冥王代生命学

丸山 茂徳戎崎 俊一金井 昭夫黒川 顕(著)

丸山 茂徳戎崎 俊一金井 昭夫黒川 顕(著)

定価 9,900 円(本体 9,000 円+税)

A5判/504ページ
刊行日:2022年11月01日
ISBN:978-4-254-17175-4 C3045

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内容紹介

最も古い地質年代「冥王代」の地球環境の研究に基づき,生命起源の新説を提示。〔内容〕研究史/生命とはなにか/太陽系惑星形成論/地球の誕生/冥王代地球表層環境/生命誕生場の条件/生命誕生場の復元:自然原子炉間欠泉モデル/他

編集部から

目次

第1章 生命の起源に関する研究史
 1.1 生命の起源に関する研究史
  1.1.1 生物学の黎明期:リンネ,ダーウィン,ヘッケルの時代
  1.1.2 隕石学者による還元的原始大気説の提案
  1.1.3 生命の起源研究を科学研究へと変えたユーリー-ミラーの実験
  1.1.4 惑星科学者による酸化的原始大気説の提案
  1.1.5 遺伝子解読の時代の始まり
  1.1.6 中央海嶺熱水系における超好熱細菌の発見
  1.1.7 鉄硫黄ワールド仮説の誕生
  1.1.8 ゲノム生物学の発展の時代
  1.1.9 化石記録から最古生命を探る
 1.2 生命誕生場の諸説
  1.2.1古典的なダーウィンの“warm little pond”とオパーリンの潮間帯モデル
  1.2.2 パンスペルミアとネオパンスペルミア
  1.2.3 火星起源
  1.2.4 中央海嶺熱水系
  1.2.5 島弧火山の噴泉塔
  1.2.6 自然原子炉間欠泉モデル
 1.3 典型的な複雑系科学としての「生命の起源」研究

第2章 生命の起源研究のための生物学概論
 2.1 生命の起源に挑む
 2.2 生命とは何か?
 2.3 細胞の構成要素概説
  2.3.1 細胞の一般的化学組成
  2.3.2 細胞内の主要な生命構成部品
  2.3.3 リボソーム:タンパク質とRNAの複合体
  2.3.4 遺伝暗号表
 2.4 生物の分類と概要:生命進化の系統樹
  2.4.1 真正細菌と古細菌(原核生物)
  2.4.2 真核生物
  2.4.3 CPR微生物群
  2.4.4 ウイルス・バクテリオファージ
 2.5 コモノートへの手がかり:Hakuba OD1
  2.5.1 Hakuba OD1はなぜ最古型生物と言えるのか
  2.5.2 冥王代類似環境微生物であるHakuba OD1の重要性
 2.6 ダーウィン進化のパラドックス
 2.7 進化の不可逆性
 2.8 地下生物圏の微生物研究の重要性

第3章 太陽系惑星形成論
 3.1 はじめに
 3.2 太陽系概観
  3.2.1 太陽系の大構造の研究史
  3.2.2 太陽系の大構造の概要
  3.2.3 太陽系惑星形成モデルは何を説明しなくてはならないか?
 3.3 惑星形成モデルの研究史
  3.3.1 隕石学に基づく太陽系惑星形成モデル(作業仮説)の提唱
  3.3.2 サフロノフと京都大学グループの惑星形成モデル
  3.3.3 計算機科学の導入による重力多体問題の数値計算
  3.3.4 原始星誕生直後に観察される双極子流の発見に基づく新たな惑星形成プロセスの提案
  3.3.5 観測データと隕石学に基づく惑星形成プロセスの提案
  3.3.6 系外惑星の発見と多様な惑星像;太陽系惑星は特殊な例?
  3.3.7 モデルに組み込まれなかったいくつかの重要な物理過程
 3.4 タンデムモデル(TANDEM Model)
  3.4.1 タンデムモデルの提案
  3.4.2 タンデムモデルに基づく太陽系形成のシナリオ
 3.5 タンデムモデルの検証
  3.5.1 小惑星帯の質量欠損と系外惑星の観測との比較
  3.5.2 岩石惑星と氷惑星の組成の違いを説明する最初のモデル
  3.5.3 ホットジュピターとスーパーアースの成因
  3.5.4 高離心率惑星の成因
 3.6 次の課題

第4章 地球の誕生
 4.1 地球形成モデルの研究史
 4.2 地球の水はどこからやってきたのか? 炭素質コンドライトが起源物質
 4.3 固体地球を作った物質とは何か?エンスタタイトコンドライトが起源物質
 4.4 地球はどうやって形成されたのか?ABELモデルの提案
  4.4.1 第一ステップ:エンスタタイトコンドライトによって無水の地球が形成された
  4.4.2 第二ステップ:大気・海洋成分(生命構成元素)の降臨
  4.4.3 ABEL爆撃とハビタブルトリニティ惑星の誕生
 4.5 ABELモデルを支持する証拠
  4.5.1 レイトベニアあるいはLHBの年代学:ABEL爆撃としての再定義
  4.5.2 ジルコンの酸化還元状態からわかるABEL爆撃によるマントルの酸化
  4.5.3 ルテニウム同位体組成で検証可能な固体地球の起源
 4.6 議 論
  4.6.1 ABEL爆撃で付加された水の量を計算する
  4.6.2 小惑星帯の化学組成分帯を考える
  4.6.3 ABEL爆撃を起こしたメカニズムとは何か
  4.6.4 月の地質に残されたABEL爆撃の間接的証拠
  4.6.5 月の小惑星爆撃の記録から導かれるABEL爆撃の規模とは

第5章 冥王代地球表層環境 ─バイオスフィア誕生が地球金星化を防いだ─
 5.1 地球がなぜ生命惑星になれたのか?
  5.1.1 暗い太陽のパラドックスとHZの再検討の必要性
  5.1.2 温暖化ガスであるCO\(_{2}\)の温室効果の是非
 5.2 冥王代地球の復元
  5.2.1 冥王代の地球表層の岩石と大気・海洋
  5.2.2 ハビタブルトリニティの概念:大陸がなければ生命は生まれない
  5.2.3 無大気・無海洋時代のスタグナントリッドテクトニクス
  5.2.4 ABEL爆撃によって起動したプレートテクトニクス
 5.3 冥王代表層環境進化
  5.3.1 最初の全球凍結期
  5.3.2 徐々に蓄積する原初大気
  5.3.3 猛毒の原始海洋
  5.3.4 生命の母だった原初大陸
  5.3.5 原初大陸のゆくえ:CMB直上から生命を見守る
  5.3.6 プレート運動による多様で動的な冥王代表層環境の出現
  5.3.7 地球をとりまく宇宙環境
  5.3.8 物質循環:還元物質と酸化物質の混合が導く生命の誕生
 5.4 地球の炭素循環
  5.4.1 現在の全地球規模の炭素循環
  5.4.2 リサイクル炭素の種類と遊離酸素の重要性
  5.4.3 短周期リサイクル炭素の量は陸地面積が決める
  5.4.4 地球史と短周期リサイクル炭素
  5.4.5 全地球規模の炭素循環の考え方
  5.4.6 冥王代の全地球規模の炭素循環
  5.4.7 大量のCO\(_{2}\)を含む冥王代の上部マントルの化石テクトスフィア
 5.5 地球の炭素循環史と気候変動解読
  5.5.1 地球の気温を決めるもの:宇宙線-雲仮説
  5.5.2 過去40万年の気候変動
  5.5.3 白亜紀:宇宙からの強制力がほとんどない超温暖期
  5.5.4 古生代:マントル起源CO\(_{2}\)供給量が最大の温暖化の時代に短期間の大規模な寒冷化が起きた例
  5.5.5 原生代末:酷寒酷暑反復(全球凍結)時代の環境変動
  5.5.6 バイオスフィアの低温限界と高温限界
  5.5.7 気候変動メカニズムの新説:バイオスフィアの炭素緩衝機構

第6章 生命誕生場の条件
 6.1 生命の誕生場に必要な条件とは
  6.1.1 冥王代地球の惑星環境の形成:太陽と大気・海洋・陸地
  6.1.2 生命誕生場の前駆的化学進化を駆動するエネルギー源の存在
  6.1.3 生命誕生場の物質循環系を駆動するエネルギー源の存在
  6.1.4 洞窟などの半閉鎖系環境
  6.1.5 大陸上の湖水環境
  6.1.6 間欠泉
  6.1.7 複数の異なる局所的環境(ドメイン)の連結
 6.2 生命誕生場の検証
  6.2.1 中央海嶺熱水系起源説
  6.2.2 パンスペルミアモデル,ネオパンスペルミアモデル
  6.2.3 火星起源モデル
  6.2.4 島弧火山の噴泉塔モデル
  6.2.5 自然原子炉間欠泉モデル
 6.3 議 論
  6.3.1 生命誕生の必要条件から必要十分条件へ
  6.3.2 冥王代における生命誕生場は1点
  6.3.3 生命誕生場の論争:生命誕生に必要な条件は生命進化に必要な条件とは異なる
  6.3.4 生命の起源と進化における宇宙の役割

第7章 自然原子炉間欠泉モデル
 7.1 自然原子炉間欠泉モデルの提案
 7.2 自然原子炉とは
 7.3 原生代(約23~21億年前)に稼働していたオクロの自然原子炉
 7.4 放射線化学の重要性:化学反応を推進する駆動力
 7.5 冥王代の自然原子炉間欠泉で起きた反応
 7.6 冥王代において自然原子炉間欠泉は形成されうるか
 7.7 自然原子炉間欠泉における物質循環の概要
  7.7.1 自然原子炉間欠泉内の6つのドメイン
  7.7.2 ドメイン1からドメイン2まで:無機物質から有機物質を合成する場
  7.7.3 ドメイン3:さらに高次のBBLsの生成
  7.7.4 ドメイン4:最も原始的な細胞の誕生場
  7.7.5 ドメイン5:酸化環境での乾湿サイクルと新たなBBLsの生成
  7.7.6 ドメイン6:コモノートの誕生場

第8章 前駆的化学進化からセルダイナミクスへ ─コモノートの誕生まで─
 8.1 はじめに
 8.2 自然原子炉間欠泉が駆動する前駆的化学進化
  8.2.1 自然原子炉はBBLsの「破壊と創造」の場
  8.2.2 BBLsの状態図
  8.2.3 相律熱力学が導く細胞内の秩序化
  8.2.4 自然原子炉が駆動するBBLs成分の一方的な高濃度化
 8.3 セルダイナミクス
  8.3.1 セルダイナミクスとは何か?
  8.3.2 細胞膜が誕生する場所と原始的細胞構造の形成プロセス
  8.3.3 温度の上下変動とともに進むカオス的な前駆的化学進化
  8.3.4 RNAとDNAの誕生場と共進化
  8.3.5 バックワードモデルに基づくセルダイナミクスへのアプローチ
  8.3.6 プロトリボソームの誕生と細胞内秩序に基づくBBLsの共進化
  8.3.7 セルの中に理想的なBBLsの組合せが偶然トラップされた場合
 8.4 コモノート誕生までの歴史
  8.4.1 セルダイナミクス第1段階:有機物のランダム合成と化学ネットワーク形成の試行錯誤
  8.4.2 セルダイナミクス第2段階:タンパク質,RNA, DNAの単体合成
  8.4.3 セルダイナミクス第3段階:RNAとタンパク質の共進化とプロトリボソームの誕生
  8.4.4 セルダイナミクス第4段階:リボソームのタンパク質合成プロセスの完成
  8.4.5 セルダイナミクス第5段階:細胞分裂機能の完成による細胞生命の誕生

第9章 コモノートの誕生と進化
 9.1 はじめに
 9.2 コモノートはどのように誕生したか
 9.3 コモノートの誕生と進化
  9.3.1 コモノートI の誕生
  9.3.2 コモノートII の誕生とその進化
  9.3.3 DNAとRNAが共存する意義
  9.3.4 ネオダーウィンポンドにおける太陽光への適応進化
  9.3.5 コモノートのその後の進化:全球凍結時代の最大の環境変動が進化の原動力
 9.4 先行研究が推定したコモノート像との対応関係
  9.4.1 コモノート推定の手法
  9.4.2 遺伝子系統樹からの推定
  9.4.3 最小遺伝子数微生物から導くコモノート像
  9.4.4 コモノートの代謝
  9.4.5 コモノートは1種類ではなく生態系として誕生した
 9.5 今後の課題:コモノート誕生の鍵はncRNA
  9.5.1 細胞システムプログラムの概念とRNAが握る生命誕生の鍵
  9.5.2 ncRNAの起源
  9.5.3 コドン表を使ったタンパク質合成の起源
  9.5.4 mRNAの起源
  9.5.5 セントラルドグマの起源
  9.5.6 ウイルス・バクテリオファージの起源
  9.5.7 比較リボソーム学の提案
 9.6 地球生命製造装置を組みたてて検証する
  9.6.1 地球生命製造装置とは
  9.6.2 地球生命製造装置を使った今後の実験計画
  9.6.3 セルダイナミクスに基づくその他の実験計画
 9.7 地球生命の進化の原理の解明に向けて
  9.7.1 生命進化の原理と遺伝子変異:茎進化
  9.7.2 生命現象の階層的理解と融合研究に向けて

第10章 人工生命合成の歴史と最前線
 10.1 タンパク質の精製と試験管内再構成系
 10.2 ゲノムプロジェクトが「生体部品」の系統的な解析を可能にした
  10.2.1 DNAシークエンサーの発展とゲノムプロジェクト
  10.2.2 微生物のゲノムにコードされる遺伝子の数と必須遺伝子
 10.3 ゲノムを化学合成する
  10.3.1 DNA合成機とPCR装置,そしてウイルスゲノムの合成
  10.3.2 遺伝子の集積,化学合成したゲノムをもつバクテリアの誕生
 10.4 本当の意味の「人工生命誕生」に向けて
  10.4.1 細胞を分子システムとして見る
  10.4.2 まだまだ考えなくてはいけない要因がある
 10.5 まとめ,将来の課題
  10.5.1 時代はゲノムを読むから書くに,そして合成生物学の台頭
  10.5.2 おわりに

第11章 科学哲学と理論 ─生命の起源の解明に向けてとるべき手法と考え方─
 11.1 はじめに
 11.2 科学哲学とは何か?
  11.2.1 三段論法:誤用が導く「宇宙は生命に溢れている」という嘘
  11.2.2 帰納法と演繹法
  11.2.3 100羽の黒いカラスと反証可能性
  11.2.4 「ある」は証明できるが「ない」は証明不能である.ただし,「ない」を実証できる場合がある
  11.2.5 研究の手法の歴史:何が複雑系科学の発展を支配したのか
 11.3 理論(Theory)とは何か?
  11.3.1 聖書に残された「理論」とは? 世界最古の地球史研究
  11.3.2 ホイッグ史観
  11.3.3 ニュートンが開いた近代科学の扉と「理論」の定義
  11.3.4 帰納的推論によって発展する複雑系科学の研究
  11.3.5 ダーウィンの進化論は理論か?
  11.3.6 地質学におけるプレートテクトニクスは理論か?
  11.3.7 全球気候モデル(GCM)の落とし穴
  11.3.8 複雑系の科学を解く手段:仮説ころがし(Abduction法)
 11.4 植民地科学から輸出科学の時代へ
 11.5 大統一理論の構築へ向けて

第12章 宇宙からゲノムまで ─生命進化のメカニズム─
 12.1 地球史における重要イベントの抽出
  12.1.1 太陽系誕生(45.67億年前)
  12.1.2 固体地球の誕生(45.3億年前)
  12.1.3 ABEL爆撃の開始(43.7億年前)
  12.1.4 プレートテクトニクスの開始(約42億年前)
  12.1.5 磁場の形成(約42億年前)
  12.1.6 生命の誕生(約42~41億年前)
  12.1.7 冥王代史概観
  12.1.8 シアノバクテリア誕生(28億年前)
  12.1.9 マントルオーバーターン(25億年前)
  12.1.10 真核生物誕生(23~21億年前)
  12.1.11 海水準の低下の開始(7~6億年前)
  12.1.12 後生動物・植物・菌類の誕生(6億年前)
 12.2 生命進化のメカニズム:宇宙からゲノムまで
 12.3 生命進化の3 つのパターン

コラム
 酵素タンパクの種類
 蚊取り線香の煙からタンデムモデルを理解する
 個体地球内部進化
 猛毒海洋を中性化する方法:風化・侵食・運搬作用の重要性
 高い遊離酸素濃度の維持システム
 短周期炭素循環の具体例:産業革命以降の炭素循環
 地球規模の気温変動解読の難しさ
 金属タンパク質の活用
 成分の取り方:1成分系,2成分系,3成分系の組成の表示法と相律の意味の解説
 タールの役割
 タンパク質を構成するアミノ酸はなぜ20種類なのか?
 自然界における最小のゲノム
あとがき
参考文献
索 引

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