症例で学ぶ疫学・生物統計学 ―臨床研究入門―

B. Kestenbaum(著)/松元 美奈子鈴木 小夜落海 浩(訳)

B. Kestenbaum(著)/松元 美奈子鈴木 小夜落海 浩(訳)

定価 5,280 円(本体 4,800 円+税)

A5判/288ページ
刊行日:2023年06月01日
ISBN:978-4-254-30127-4 C3047

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内容紹介

Epidemiology and Biostatistics: An Introduction to Clinical Research, 2nd editionの翻訳。臨床研究に必須の疫学・生物統計の基礎を平易な表現・数式で初学者にもわかりやすく解説。巻末の用語集も充実。

編集部から

「訳者まえがき」より

…本書の最大の特長は,疫学と生物統計学を初めて学ぶ読者を念頭に多くの工夫がなされていることであろう。各章の冒頭では「学習の要点」が簡潔にまとめられ,その後に続く本文ではさまざまな症例や事例を題材に,データを用いた実践的解説が展開される構成になっている。解説に用いる症例や事例は臨床系専門誌の既報に基づいたものが多く,疾患,薬剤,検査値などの記述は具体的である。また,解析にともなう実際の作業ステップは,各事例で扱う数値および重要な概念とともに図表の形でわかりやすくまとめられている。さらに必要に応じて統計値の計算過程も記述されているため,疫学や生物統計学は概念的で難しいと感じる初学者でも興味をもって取り組みやすいテキストであるといえる。とはいっても内容に関して妥協はなく,各統計量に関する本質的な解釈や基本的理解に必要な理論は明確に解説されている。
今や,医療の発展に寄与する臨床研究はベッドサイドでのデータ収集だけではない。データサイエンス,ビッグデータ,AIなど,蓄積された既存情報を効果的に活用するサイエンスへの関心が高まるにつれ,疫学が応用される領域も急速に拡大している。加えて,倫理観を基盤とする科学性,公正性,安全性(被験者保護)を備えた臨床研究を実施するためには,信頼性(精度),妥当性,バイアス,交絡,サンプルサイズ等に関する疫学および生物統計学の基本知識は必須であり,これら概念の理解なくして正しい研究計画の立案には至らない。このような観点から本書を眺めたとき,医療系学部および公衆衛生やライフサイエンスに関わる広い領域の大学生や大学院生,あるいはこれから疫学研究を含む臨床研究を始めたいと考えている医療者が本書を教科書として,あるいは参考図書として利用すれば,これまで難解と感じられていた(かもしれない)疫学や生物統計学がそれほど困難なものではなかったことに気づくはずである。…

目次

目次
第I部 疫学
1. 健康と病気の因果関係
1.1 疫学調査から因果関係を推論する
1.2 因果推論を裏づけする要素
 1.2.1 無作為化試験から生まれるエビデンス
 1.2.2 関連の強さ
 1.2.3 時間的関係
 1.2.4 曝露量依存性
 1.2.5 生物学的妥当性
2. 疾患頻度の基本的な測定
2.1 有病率
 2.1.1 有病率の定義
 2.1.2 有病率データの応用
 2.1.3 有病率の限界
2.2 罹患(発生)
 2.2.1 罹患(発生)の定義
 2.2.2 罹患データの応用
2.3 有病率と罹患率の関係
2.4 人,場所,時間による層別化
 2.4.1 個人の特性による層別化
 2.4.2 場所の特性による層別化
 2.4.3 時間の特性による層別化
3. 疫学研究の概論
3.1 介入研究と観察研究のデザイン
 3.1.1 介入研究では特定の治療効果を明らかにすることができる
 3.1.2 介入研究は特定の治療と疾病の評価に限定される
 3.1.3 介入研究の結果は適用可能性が限定される場合がある
3.2 研究対象集団
 3.2.1 源泉集団
 3.2.2 除外基準
 3.2.3 研究論文の中で研究対象集団について述べられているセクション
3.3 曝露とアウトカム
 3.3.1 定義
 3.3.2 研究データの測定
 3.3.3 研究論文の中で曝露とアウトカムについて述べられているセクション
3.4 内的妥当性と外的妥当性
3.5 一般的な調査研究デザインのまとめ
4. 症例報告と症例研究
5. 横断研究
6. コホート研究
6.1 コホート研究のデザイン
 6.1.1 疾病の除外
 6.1.2 コホートの形成
 6.1.3 アウトカムの決定
6.2 曝露の測定の質
 6.2.1 測定は正確か?
 6.2.2 測定は精度が高いか?
 6.2.3 測定は研究対象集団に一様に適用されるか?
 6.2.4 測定は適切なタイミングで行われているか?
 6.2.5 データの収集は後ろ向きか前向きか
6.3 薬剤疫学研究
6.4 コホート研究データの分析
 6.4.1 コホートごとの疾病発生の計算
 6.4.2 コホートどうしの疾病発生の比較
6.5 コホート研究の利点
 6.5.1 曝露と疾病の時間的関係の識別
 6.5.2 複数のアウトカムの調査
6.6 コホート研究の限界
 6.6.1 交絡
 6.6.2 まれな疾病や潜伏期間が長い疾病の研究には非効率的なデザイン
7. 症例対照研究
7.1 症例対照研究のデザイン
7.2 ケースとコントロールの選択
 7.2.1 疾病の定義を明らかにしてケース群を選ぶ
 7.2.2 疾病発症の初期に近いケース群を選ぶ
 7.2.3 ケース群と同じ母集団からコントロール群を選択する
 7.2.4 コントロール群にもケース群と同じ検出法を用い,ケースもしくはコントロールに選定される機会が同等になるようにする
 7.2.5 ネステッド症例対照研究
 7.2.6 マッチング
 7.2.7 コントロールの数
7.3 症例対照研究データの分析
 7.3.1 オッズ比の概念
 7.3.2 オッズ比の計算
 7.3.3 オッズ比と相対リスク
7.4 症例対照研究の利点
 7.4.1 希少疾病や潜伏期間の長い疾病を調べるのに理想的である
 7.4.2 効率
 7.4.3 複数の曝露の評価
7.5 症例対照研究の限界
 7.5.1 交絡
 7.5.2 後ろ向きに過去の曝露を確認する必要がある
 7.5.3 疾病の発生リスクを直接調べることができない
8. 無作為化比較試験
8.1 無作為化比較試験の根拠
8.2 無作為化比較試験の一般的なデザイン
8.3 試験集団
 8.3.1 対象疾病の定義
 8.3.2 研究治療へのアドヒアランスに問題があると思われる人の除外
 8.3.3 合併症がある人の除外
 8.3.4 すでに研究対象の治療を受けている人の除外
 8.3.5 安全性を考慮した除外
 8.3.6 広域にわたる多施設で研究を実施すると,試験結果の適用可能性が向上する
8.4 介入とコントロール
 8.4.1 介入
 8.4.2 コントロール
8.5 試験のアウトカム
 8.5.1 介入による重要な有益性と有害性をとらえる
 8.5.2 アウトカムの種類
 8.5.3 死亡アウトカム
 8.5.4 代替エンドポイント
 8.5.5 試験の早期終了
8.6 試験の内的妥当性を高める方法
 8.6.1 無作為化
 8.6.2 盲検化
 8.6.3 治療割り付けの秘匿
 8.6.4 有効性と効果
 8.6.5 試験報告
8.7 具体的な試験デザイン
 8.7.1 要因配置法試験
 8.7.2 クロスオーバー試験
 8.7.3 薬剤の開発段階
8.8 臨床試験データの分析
 8.8.1 効果の測定
 8.8.2 治療意図解析(ITT解析)
 8.8.3 サブグループ解析
8.9 無作為化比較試験の限界
 8.9.1 試験集団の外的妥当性(適用性)が限定されること
 8.9.2 試験環境の外的妥当性(適用性)が限定されること
 8.9.3 的を絞ったリサーチクエスチョン
 8.9.4 無作為化デザインで対処できるのは交絡のみである
 8.9.5 試験の失敗
9. 誤分類
9.1 誤分類の定義
9.2 非差異的誤分類
 9.2.1 曝露の非差異的誤分類
 9.2.2 アウトカムの非差異的誤分類
 9.2.3 非差異的誤分類のまとめ
9.3 差異的誤分類
 9.3.1 曝露の差異的誤分類
 9.3.2 アウトカムの差異的誤分類
 9.3.3 差異的誤分類のまとめ
9.4 研究論文における誤分類の評価
10. 交絡
10.1 交絡は因果関係の理解を歪める
10.2 潜在的交絡因子の評価
 10.2.1 交絡因子と曝露との関連
 10.2.2 交絡因子とアウトカムとの関連
 10.2.3 交絡因子は因果パス上に存在してはならない
 10.2.4 研究論文内における交絡因子の評価
10.3 残差交絡
10.4 適応症による交絡
10.5 交絡を調整する方法
 10.5.1 制限
 10.5.2 層別化
 10.5.3 マッチング
 10.5.4 回帰
10.6 交絡調整後の結果の解釈
11. 効果修飾
11.1 効果修飾の概念
11.2 効果修飾の評価
 11.2.1 効果修飾の評価基準
 11.2.2 効果修飾の評価の統計学的考察
11.3 効果修飾と交絡は異なる概念である
11.4 相対尺度と絶対尺度での効果修飾
12. スクリーニングと診断
12.1 スクリーニングと診断の一般原理
12.2 検査の有用性
12.3 スクリーニングに適した疾病の特性
 12.3.1 疾病の早期発見が有意義な有益性をもたらすこと
 12.3.2 スクリーニング検査は深刻な結果をもたらす可能性がある疾病を対象とすること
 12.3.3 スクリーニングの対象となる疾病には発症前の段階が必要である
12.4 スクリーニングや診断に適した検査の特性
 12.4.1 妥当性
 12.4.2 信頼性
12.5 結果が連続値で与えられる検査のカットオフ値を定義する
12.6 スクリーニング研究におけるバイアスの種類
 12.6.1 交絡(紹介バイアス)
 12.6.2 リードタイムバイアス
 12.6.3 レングスバイアスのかかった標本抽出
12.7 予防のレベル
 12.7.1 一次予防
 12.7.2 二次予防
 12.7.3 三次予防
12.8 関連を示すだけでは予測に不十分である
第II部 生物統計学
13. 要約統計量
13.1 変数のタイプ
13.2 単変量解析
 13.2.1 ヒストグラム
 13.2.2 分布の位置とばらつき
 13.2.3 分位数
 13.2.4 二値変数データによる単変量統計量
13.3 2変量解析
 13.3.1 カテゴリーごとの分割表
 13.3.2 相関
 13.3.3 分位数-連続変数プロット
14. 統計学的推論の導入
14.1 母集団と標本の定義
14.2 外的妥当性
14.3 統計学的推論
14.4 信頼区間
14.5 仮説検定
 14.5.1 統計的仮説の構成
 14.5.2 p値
15. 仮説検定の実際
15.1 2標本検定による仮説検定
 15.1.1 t検定
 15.1.2 カイ二乗検定
 15.1.3 その他の種類の調査データにおける仮説検定
 15.1.4 分散分析
15.2 仮説検定の不完全性
 15.2.1 第一種の過誤
 15.2.2 第二種の過誤
15.3 検出力
 15.3.1 サンプルサイズ
 15.3.2 効果量
 15.3.3 ばらつき
 15.3.4 有意水準
16. 線形回帰
16.1 2変数間の関連
16.2 線形単回帰
 16.2.1 回帰直線
 16.2.2 残差と平方和
 16.2.3 線形回帰モデルにおける連続型共変量の解釈
 16.2.4 線形回帰モデルにおける二値共変量の解釈
16.3 回帰診断
 16.3.1 絶対的なあてはまり具合と相対的なあてはまり具合
 16.3.2 非線形の関連
 16.3.3 影響力のある観測値
 16.3.4 回帰式の外挿
16.4 線形重回帰
 16.4.1 重回帰モデルの定義
 16.4.2 重回帰モデルの結果の解釈
16.5 重回帰における交絡と効果の修飾
 16.5.1 交絡
 16.5.2 効果の修飾
17. 対数リンク関数を伴う回帰とロジスティック回帰
17.1 比率のための回帰
 17.1.1 対数リンク関数を用いた回帰
 17.1.2 対数リンク関数を用いた回帰モデルの解釈
 17.1.3 対数リンク関数を伴う回帰の結果についての仮説検定
17.2 ロジスティック回帰
 17.2.1 ロジスティック回帰モデルの定義と解釈
 17.2.2 研究論文におけるロジスティック回帰の結果の解釈
18. 生存分析
18.1 生存データを用いる理由
18.2 生存データの解釈
 18.2.1 生存関数
 18.2.2 S(t)から特定の時点における生存率および生存期間中央値を推定する
 18.2.3 生存データの統計学的検定
18.3 生存関数の推定
 18.3.1 アウトカムと打ち切りの定義
 18.3.2 打ち切りデータがない場合における生存関数のKaplanMeier推定
 18.3.3 打ち切りデータにおける生存関数のKaplanMeier推定
18.4 Cox比例ハザードモデル
18.5 生存データの解釈
 18.5.1 ハザード比の解釈
 18.5.2 生存データとハザード比データの解釈
用語解説
索引

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