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リンの事典
大竹 久夫(編集代表)
内容紹介
リンは生命に必須であり,古くから肥料として産業上も重要であった。工業製品や食品,医薬品など,その用途は拡大の一途をたどる一方,その供給は地下資源に依存しており,安価な材料として使い続けることは限界を迎えようとしている。基礎的な性質から人間活動への影響まで,リンに関する情報を網羅した本邦初の総合事典。〔内容〕リンの化学/リンの地球科学/リンの生物学/人体とリン/工業用素材/農業利用/工業利用/リン回収技術/リンリサイクル
編集部から
・元素リンの本邦初の総合事典!
・「いのちの元素」であり,「産業の栄養素」である一方、環境破壊の原因にもなり,資源の枯渇が問題化しているリン。その基本的な性質・用途など全体像を俯瞰する。
・海外からのリン鉱石の輸入に頼っている日本にとって避けることのできない,リン資源問題への理解を高める書。
○読者対象
・化学,生物学,栄養学・医学・薬学,環境・資源・生態学の研究者。
・農業(肥料や飼料関係),製造業(食品,医薬・化成品,電気・電子),商社の技術者・実務家。
・資源のリサイクルに関わる実務家,自治体関係者。
目次
第1章 リンの化学
概説 いのちの元素リン (杉山 茂)
1-1 リンとは何か
1-1-1 リンの性質 (相澤 守)
1-1-2 リンの存在状態 (大倉利典)
1-2 リン化合物
1-2-1 リンの同素体 (木ノ瀬豊)
1-2-2 リンのオキシ酸 (牧 秀志)
1-2-3 リン酸塩 (橋本和明)
1-2-4 塩化リン (國貞眞司)
1-2-5 金属リン化物 (神田康晴)
1-2-6 有機リン化合物 (韓 立彪・吉村 彩)
1-3 リンの分析方法
1-3-1 比色分析 (田中秀治)
1-3-2 NMR分析 (中山尋量)
1-3-3 ラマン分析 (倉科 昌)
1-3-4 IR分析 (田中秀和)
1-3-5 クロマト分析 (前田秀子)
1-3-6 ICP分析 (薮谷智規)
1-3-7 XAFS分析 (柏原輝彦)
1-3-8 リン酸-酸素安定同位体分析 (奥田 昇)
第2章 リンの地球科学
概説 地球におけるリン循環 (佐竹研一)
2-1 地球上での存在
2-1-1 湖 沼 (杉山雅人)
2-1-2 河 川 (早川 敦)
2-1-3 海 洋 (鈴村昌弘)
2-1-4 地下水 (小野寺真一)
2-1-5 土 壌 (橋本洋平・和穎朗太)
2-1-6 黄 砂 (中尾 淳)
2-2 生物圏でのリン循環
2-2-1 湖沼生態系 (杉山雅人)
2-2-2 河川生態系 (岩田智也)
2-2-3 沿岸域生態系 (梅澤 有)
2-2-4 貧栄養海域生態系 (鈴村昌弘)
2-2-5 森林生態系 (稲垣昌宏)
2-2-6 人間活動のリン循環への影響 (小野寺真一・佐竹研一)
2-3 リン鉱石
2-3-1 リン資源の歴史 (松八重一代)
2-3-2 リン鉱石の分類 (佐藤英俊)
2-3-3 リン鉱石の形成年代 (大竹久夫)
2-3-4 リン鉱石の化学組成と品質 (秋山 堯)
2-3-5 リン鉱石の産地と埋蔵量 (大竹久夫)
2-3-6 リン鉱石の採掘量と枯渇問題 (中島謙一)
2-3-7 リン鉱石の採掘と環境問題 (山末英嗣)
2-3-8 リン鉱石の輸入 (原田康晃)
2-3-9 日本のリン鉱石 (橋本光史)
第3章 リンの生物学
概説 生物とリン (黒田章夫)
3-1 生物中のリン
3-1-1 核 酸 (杉山峰崇)
3-1-2 リン脂質 (秋 庸裕)
3-1-3 フィチン酸 (実岡寛文)
3-1-4 ピロリン酸とポリリン酸 (黒田章夫)
3-1-5 ホスホン酸 (廣田隆一)
3-1-6 骨と歯 (吉子裕二)
3-1-7 カゼインミセル (小野伴忠)
3-2 リンの機能と代謝
3-2-1 遺 伝 (金子嘉信)
3-2-2 エネルギー代謝(ATP,クレアチンリン酸) (今村博臣)
3-2-3 リン脂質の膜機能 (秋 庸裕)
3-2-4 リン酸シグナル伝達 (原島 俊)
3-2-5 リン酸の輸送と貯蔵 (廣田隆一)
3-2-6 光合成とリン酸 (和崎 淳)
3-3 リン循環に重要な環境微生物
3-3-1 リン蓄積微生物 (常田 聡)
3-3-2 アーバスキュラー菌根菌 (齊藤雅典)
3-3-3 リン溶解菌 (岡野憲司)
3-3-4 アオコと富栄養化問題 (岩崎一弘・矢木修身)
3-3-5 赤潮を形成する微生物 (今井一郎)
第4章 人体とリン
概説 人体とリン (竹谷 豊)
4-1 リンの吸収と排泄
4-1-1 ヒトにおけるリン代謝 (藤井 理・宮本賢一)
4-1-2 ナトリウム依存性リントランスポーター (瀬川博子)
4-1-3 吸収と排泄の調節因子 (福本誠二)
4-1-4 唾液中のリン (瀬川博子)
4-2 リンと疾患
4-2-1 リンの体内分布 (谷口正智)
4-2-2 リン欠乏症・過剰症 (道上敏美)
4-2-3 リンと慢性腎臓病 (深川雅史)
4-2-4 リンと循環器疾患 (濱野高行)
4-2-5 リンと骨疾患 (鈴木敦詞)
4-2-6 リンと老化 (黒尾 誠)
4-2-7 リン補給薬とリン吸着薬(リン低下薬) (重松 隆)
4-2-8 リンと筋疾患 (竹谷 豊)
4-2-9 リンと赤血球・貧血 (小笠原洋治・横山啓太郎)
4-2-10 有機リン中毒 (森田 洋)
4-3 リンと栄養
4-3-1 日本人のリン摂取量の現況と摂取基準 (上西一弘)
4-3-2 海外のリン摂取量の現況と摂取基準 (小尾佳嗣)
4-3-3 リン摂取量の評価法 (片井加奈子)
4-3-4 リン摂取上限量 (新井英一)
4-4 食品中のリンとはたらき
4-4-1 有機リンと無機リン (伊藤美紀子)
4-4-2 食品中のリンと調理の影響 (佐久間理英)
4-4-3 食品添加物としてのリン (伊藤美紀子)
4-4-4 リンを多く含む食品・リンの少ない食品 (新井英一)
4-4-5 リンと他の栄養素との相互作用について (山本浩範)
第5章 工業用素材
概説 リンは重要な工業素材 (大竹久夫)
5-1 黄リン
5-1-1 製造方法 (稲生吉一)
5-1-2 世界の黄リン生産 (大竹久夫)
5-1-3 黄リン製造の課題 (津下 修)
5-1-4 高純度素材としての黄リン (坂尾耕作)
5-2 リン化合物
5-2-1 乾式法と湿式法 (佐藤英俊)
5-2-2 リン酸塩の製造方法 (松田信之)
5-2-3 塩化リンの製造方法 (國貞眞司)
5-3-4 有機リンの製造法 (川口真一・伊川英市)
第6章 農業利用
概説 食料生産とりん (三島慎一郎)
6-1 リン肥料
6-1-1 りん酸質肥料 (橋本光史)
6-1-2 りん酸質肥料の効果 (平舘俊太郎)
6-1-3 りん酸質肥料の歴史 (橋本光史)
6-1-4 肥料用リンの消費量 (成田義貞)
6-1-5 肥料使用量の削減 (谷 昌幸)
6-1-6 肥料取締法と肥料登録 (菅原和夫)
6-1-7 リンの農業利用と環境問題 (三島慎一郎)
6-2 リン肥料各論
6-2-1 土壌中の可給態リンの測定方法 (犬伏和之)
6-2-2 リン酸製造の副産物 (用山徳美)
6-2-3 過りん酸石灰と重過りん酸石灰 (吉田吉明)
6-2-4 熔成りん肥 (岩井良博)
6-2-5 焼成りん肥 (橋本光史)
6-2-6 加工りん酸肥料およびそのほかのりん酸肥料 (橋本光史)
6-2-7 副産りん酸肥料 (橋本光史)
6-2-8 化成肥料 (西倉 宏)
6-2-9 りん酸アンモニウムの製造方法 (吉田吉明)
6-2-10 わが国におけるBB肥料の現状と課題 (小林 新)
6-3 飼料への添加
6-3-1 飼料安全法とリン (石黒瑛一)
6-3-2 配合飼料とリン (井上 譲)
6-2-3 家畜のリン吸収 (安部佑美・祐森誠司)
第7章 工業利用
概説 工業分野におけるリン利用 (大竹久夫)
7-1 食品分野
7-1-1 食肉加工とリン (荒川史博)
7-1-2 食品添加物 (野口智弘)
7-1-3 サプリメント (竹谷 豊)
7-2 ハイテク分野
7-2-1 表面処理剤 (石井 均)
7-2-2 電子部品製造 (山口典生)
7-2-3 電 池 (棟方裕一)
7-3 医薬・化成品分野
7-3-1 難燃剤・消火剤 (真名垣聡)
7-3-2 リン製剤 (鈴木千明・山本裕美子)
7-3-3 輸液製剤 (花房規男)
7-3-4 ビスホスホネート (勝見英正・山本 昌)
7-3-5 バイオセラミックス (山下仁大)
7-3-6 農 薬 (岡田芳治)
7-4 その他の分野
7-4-1 触 媒 (杉山 茂)
7-4-2 清缶剤 (伊丹良治)
7-4-3 セラミックス (櫻井 誠)
7-3-4 有害物質の除去 (大倉利典)
第8章 リン回収技術
概説 リンの除去および回収 (村上孝雄)
8-1 二次リン資源
8-1-1 下水汚泥 (佐藤和明)
8-1-2 家畜糞尿 (鈴木一好)
8-1-3 食肉加工副産物 (山浦 健)
8-1-4 製鋼スラグ (後藤耕一郎)
8-1-5 食品廃棄物 (広瀬 祐)
8-1-6 し尿および浄化槽汚泥 (河窪義男)
8-2 下水からの回収技術
8-2-1 下水中のリン (南山瑞彦)
8-2-2 下水からのリン除去技術 (村上孝雄)
8-2-3 下水二次処理水からのリン回収 (大屋博義)
8-2-4 下水汚泥処理工程からのリン回収 (古賀大輔)
8-2-5 下水汚泥焼却灰からのリン回収 (薗田健一)
8-2-6 下水汚泥焼却灰の焼成肥料化技術 (今井敏夫)
8-3 その他の二次資源からの回収技術
8-3-1 畜産廃棄物(豚糞) (上田浩三)
8-3-2 畜産廃棄物(鶏糞) (矢野健児)
8-3-3 発酵産業廃水 (日高寛真)
8-3-4 製鋼スラグ (三木貴博・長坂徹也)
8-3-5 し 尿 (一瀬正秋)
8-3-6 電子部品産業排水 (織田信博)
8-3-7 合成アルコール工場排水 (大野智之)
8-3-8 めっき廃液からの回収 (吉岡敏明・長坂徹也・熊谷将吾)
8-3-9 植物油脂製造プロセスからのリン回収 (鈴木秀男)
8-3-10 米ぬかからのリンの回収 (加藤浩司)
第9章 リンリサイクル
概説 リンリサイクル (大竹久夫)
9-1 世界と日本のリンフロー
9-1-1 リンフロー (松八重一代)
9-1-2 日本のリン輸入量 (大竹久夫)
9-1-3 国内リン製品生産 (大竹久夫)
9-1-4 需要部門 (金古博文)
9-2 再利用技術
9-2-1 回収リンの肥料化 (後藤逸男)
9-2-2 下水汚泥焼却灰のリン酸原料化 (用山徳美)
9-2-3 コンクリートスラッジの利用 (飯塚 淳・吉田浩之)
9-2-4 非晶質ケイ酸カルシウムの利用 (岡野憲司)
9-2-5 下水汚泥溶融スラグのリン資源としての利用 (寳正史樹)
9-3 社会実装と課題
9-3-1 産官学連携の取り組み (菅原 良)
9-3-2 世界の取り組み (鎗目 雅)
9-3-3 社会政策的課題 (松尾真紀子)
9-3-4 環境教育の役割 (三好恵真子)
9-3-5 リンの地産地消 (菅原龍江)
9-3-6 リン利用の関与物質総量 (山末英嗣)
【トピックス一覧】
1.リンショック (大竹久夫)
2.カンブリア爆発とリン (佐藤友彦)
3.米国におけるリン鉱石の発見 (大竹久夫)
4.リン資源の枯渇とは (大竹久夫)
5.低フィチン穀類によるリンの有効利用 (実岡寛文)
6.リン酸走化性 (加藤純一)
7.なぜシグナル伝達にリン酸化が都合がよいのか (原島 俊)
8.植物根分泌物とリンの動態 (和崎 淳)
9.リン蓄積菌の分子育種 (黒田章夫)
10.リフィーディング症候群 (竹谷 豊)
11.リンと尿路結石 (竹谷 豊)
12.亜リン酸の利用 (廣田隆一)
13.リン鉱石の起源とポリリン酸 (黒田章夫)
14.植物のリン欠乏における膜脂質転換 (下嶋美恵・太田啓之)
15.糞尿(し尿)という資源 (橋本光史)
16.肥料登録調査機関としてのFAMIC (高橋 賢)
17.うま味成分とリン酸化 (三原康博)
18.バイオリン鉱石 (滝口 昇)
19.リンを高蓄積するクロレラ (河野重行・大田修平)
20.ラッカセイに学ぶリン資源の有効活用 (矢野勝也)
21.岐阜市での取り組み (後藤幸造)
22.二酸化炭素で廃棄物からリンを取り出す (遠山岳史)
執筆者紹介
編集委員
(編集委員長)
大竹 久夫 早稲田大学総合研究機構 リンアトラス研究所
大阪大学名誉教授・広島大学名誉教授
杉山 茂 徳島大学 大学院社会産業理工学研究部
佐竹 研一 元 立正大学地球環境科学部
小野寺真一 広島大学 大学院総合科学研究科
黒田 章夫 広島大学 大学院先端物質科学研究科
竹谷 豊 徳島大学 大学院医歯薬学研究部
橋本 光史 早稲田大学総合研究機構 リンアトラス研究所
三島慎一郎 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
村上 孝雄 株式会社日水コン