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内容紹介
環境省レッドリストに掲載される,絶滅危機に瀕する日本の植物種について,美しく貴重な写真をふんだんに用いて紹介する.総論では地球の歴史や社会的背景を踏まえ,危機要因や保全活動を総合的に解説.各論では各絶滅危惧種の生態・危機要因・保全の取り組みなどを説明し,日本の自然の現状を読み解く.絶滅種もコラムで紹介.
編集部から
序
現在,地球の歴史上で6度目の大量絶滅が起こり始めている.クマをはじめとする野生動物の増加や人獣共通感染症を媒介する生物が注目されるなか,実感しにくいかもしれないが,これは科学的なエビデンスに基づいた評価である.実際,大多数の生物の種は減少の一途をたどり,絶滅の危機に直面している種も少なくないのは事実である.
生物多様性の消失は,こうした状況を背景に,いまや自然愛好家や研究者だけの関心事ではなく,人々の安全で健康な生活や経済活動を脅かす主要な社会問題の1つとして認識されている.例えば,世界経済フォーラムが公表した2025年の報告によれば,今後10年間のグローバルリスクとして,生物多様性の喪失や生態系の崩壊が気候変動に次いで2位にランクされている.国内でも同様な認識が高まっており,生物多様性の保全を目的とした政府や自治体,企業による様々な制度や取り組みが実施されている.2023年から始まった自然共生サイトの認定制度や,TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)はその例である.
社会の中で便利な共通用語として使われるようになった「生物多様性」であるが,その消失にもっとも深く関わっているはずの絶滅危惧種1つ1つの生きざまについて,私たちはどれほど理解しているだろうか.本書は,絶滅危惧種の現状についての知識があいまいなまま生物多様性の諸課題が語られるという,いわばアンバランスな現状への問題意識から生まれた.本書を読めば,「日本では,いま生物多様性についてどのような問題が起きているか」という問いに対し,具体的かつ現実的に答えられるようになるだろう.
もちろん,限られた紙面で数多の絶滅危惧種を詳解することはできない.そこで本書『図説 日本の絶滅危惧種』動物編・植物編では,分類群や生態系のバランスを考え,保全状況が比較的把握されているものを対象に,動物と植物それぞれ100種(一部は種群)を選定した.各種の解説では,とくにその分布状況や減少要因,保全の取り組みとその課題について,専門外の読者にも理解しやすいよう平易な記述を心がけた.それぞれの種の現状を知り尽くした60名近いエキスパートが執筆したため,インターネットでは得がたい最新かつ奥深い内容に仕上がったと自負している.また本書は写真をふんだんに取り入れた図説であるため,自然愛好家はもちろん,行政や企業,NPO,教育関係者,学生など,あらゆる人々に手にとって読んでいただける体裁になっている.本書を通して,国の自然遺産ともいえる絶滅危惧種の現状に対する理解が深まり,生きものの美しさや尊さを実感していただくことで,人と自然の関わり方を考え直す契機となれば,望外の喜びである.
最後に,本書の刊行にあたりご協力いただいた山北剛久氏,写真提供者,そして朝倉書店には,この場を借りて感謝申し上げる.
2026年9月
西廣 淳・宮下 直
目次
■高山・亜高山
1 タカネハナワラビ 首藤光太郎
2 センジョウスゲ 矢野興一
3 タカネマンテマ 早川宗志
4 ヒメコザクラ 下野綾子
5 アカイシリンドウ 早川宗志
6 ヒメウスユキソウ 尾関雅章
■森林
7 キリシマイワヘゴ 海老原 淳
8 イワウラジロ 海老原 淳
9 ヤシャイノデ 尾関雅章
10 ヤクタネゴヨウ 阪口翔太
11 トガサワラ 阪口翔太
12 タマノカンアオイ 柿嶋 聡
13 コブシモドキ 阪口翔太
14 ユキモチソウ 柿嶋 聡
15 コウベタヌキノショクダイ 末次健司
16 アツモリソウ 下野綾子
17 クマガイソウ 山下由美
18 タンザワサカネラン 山下由美
19 アンドンマユミ 望月 昂
20 アイヌムギ 首藤光太郎
21 ヤシャビシャク類 阪口翔太
22 タデスミレ 尾関雅章
23 クロビイタヤ 佐伯いく代
24 カッコソウ 西廣 淳
25 キリシマギンリョウソウ 末次健司
26 アマギツツジ 渡辺洋一
27 ウラジロヒカゲツツジ 阪口翔太
28 クサナギオゴケ 望月 昂
29 ビロードムラサキ 山ノ内崇志
30 タジマタムラソウ 高野温子
31 オチフジ 高野温子
■岩場
32 タキユリ 山ノ内崇志
33 フォーリーガヤ 首藤光太郎
34 ナナツガママンネングサ 伊東拓朗
35 キンロバイ 下野綾子
36 ハコネコメツツジ 渡辺洋一
37 トサオトギリ 中濱直之
38 センリゴマ 兼子伸吾
39 ヒメスイカズラ 内貴章世
■草原
40 ヒメユリ 横川昌史
41 オキナグサ 横川昌史
42 マツモトセンノウ 横川昌史
43 ミチノクフクジュソウ 兼子伸吾
44 ハナシノブ 横川昌史
45 スズサイコ 中濱直之
46 キキョウ 早川宗志・中濱直之
47 ヒゴタイ 兼子伸吾
48 ヒメヒゴタイ 中濱直之
49 ヤナギノギク 早川宗志
50 ヒナノキンチャク 黒沢高秀
■湿地・水域
51 トネハナヤスリ 海老原 淳
52 オニバス 志賀 隆
53 シモツケコウホネ 志賀 隆
54 マイヅルテンナンショウ 柿嶋 聡
55 トリゲモ 志賀 隆
56 ガシャモク 首藤光太郎
57 サギソウ 中濱直之
58 オオミズトンボ 黒沢高秀
59 ヒメミズトンボ(広義) 大森威宏
60 コシガヤホシクサ 田中法生
61 シラタマホシクサ 佐伯いく代
コラム 植物の復活と絶滅 大森威宏・西廣 淳
62 ホソスゲ 矢野興一
63 タカネハリスゲ 大森威宏
64 ヒメマツカサススキ 大森威宏
65 ビャッコイ 黒沢高秀
66 ヤチカンバ 中濱直之
67 カワゴケソウ 山ノ内崇志
68 ハナノキ 佐伯いく代
69 ナガバノイシモチソウ 野村康之
70 ムジナモ 野村康之
71 ヒメツルコケモモ 首藤光太郎
72 マルバノサワトウガラシ 山ノ内崇志
73 カミガモソウ 早川宗志
74 ミゾコウジュ 高野温子
75 フサタヌキモ 野村康之
76 ソラチアオヤギバナ 阪口翔太
■海岸
77 ウミショウブ 田中法生
78 エビアマモ 田中法生
79 シバナ 黒田有寿茂
80 ハマビシ 黒田有寿茂
81 ハギクソウ 黒沢高秀
82 ソナレセンブリ 渡辺洋一
83 バシクルモン 横川昌史
84 トウテイラン 黒田有寿茂
85 ウラギク 横川昌史
■島嶼
86 ハハジマホラゴケ 海老原 淳
87 クロボウモドキ 内貴章世
88 トックリスゲ 矢野興一
89 ムニンタイトゴメ 伊東拓朗
90 シンチクヒメハギ 伊東拓朗
91 イトスナヅル 伊東拓朗
92 テンノウメ 内貴章世
93 ドナンコバンノキ 黒沢高秀
94 ハハジマノボタン 井鷺裕司
95 ムニンフトモモ 井鷺裕司
96 ウチダシクロキ 伊東拓朗
97 ムニンツツジ 井鷺裕司
98 リュウキュウホウライカズラ 内貴章世
99 シマカコソウ 望月 昂・小牧義輝・田中健文
100 コバトベラ 阪口翔太
索引

執筆者紹介
監 修
西廣 淳 国立環境研究所
宮下 直 東京大学名誉教授
編集委員
中濱直之 大阪公立大学
志賀 隆 新潟大学
執筆者(五十音順)
井鷺裕司 京都大学名誉教授
伊東拓朗 東北大学
海老原 淳 国立科学博物館
大森威宏 群馬県立自然史博物館
尾関雅章 長野県環境保全研究所
柿嶋 聡 昭和医科大学
兼子伸吾 福島大学
黒沢高秀 福島大学
黒田有寿茂 兵庫県立大学
小牧義輝 東京大学
佐伯いく代 大阪大学
阪口翔太 京都大学
志賀 隆 新潟大学
下野綾子 東邦大学
首藤光太郎 北海道大学
末次健司 神戸大学
高野温子 兵庫県立大学
田中健文 東京大学
田中法生 国立科学博物館
内貴章世 琉球大学
中濱直之 大阪公立大学
西廣 淳 国立環境研究所
野村康之 奈良女子大学/株式会社バイオーム
早川宗志 ふじのくに地球環境史ミュージアム
宮下 直 東京大学名誉教授
望月 昂 東京大学
矢野興一 岡山理科大学
山下由美 福島大学
山ノ内崇志 福島大学
横川昌史 大阪市立自然史博物館
渡辺洋一 千葉大学

























