世界遺産 屋久島 ―亜熱帯の自然と生態系―

大澤 雅彦田川 日出夫山極 寿一(編)

大澤 雅彦田川 日出夫山極 寿一(編)

定価 10,450 円(本体 9,500 円+税)

B5判/288ページ
刊行日:2006年10月30日
ISBN:978-4-254-18025-1 C3040

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内容紹介

わが国有数の世界自然遺産として貴重かつ優美な自然を有する屋久島の現状と魅力をヴィジュアルに活写。〔内容〕気象/地質・地形/植物相と植生/動物相と生態/暮らしと植生のかかわり/屋久島の利用と保全/屋久島の人,歴史,未来/他。

編集部から

 世界遺産とは,1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づいて,「世界遺産リスト」に記載(登録)された自然や文化のことです。
 「リスト」の作成目的は,地球にある素晴らしい自然や文化を,国や民族をこえて,人類が共有すべき普遍的な価値をもつものとして守っていくことにあり,特に消滅や崩壊の危機に瀕する自然や文化財を守り,未来に受け継ぐというのが最大の眼目となっています。
 本書のテーマ「屋久島」は,序文にあるように
 ○周囲から隔絶した孤島として,手つかずのユニークな生態系システムを有する
 ○亜熱帯から高山帯までの自然環境がみられるいわば日本の自然の縮図
 ○1000年以上の樹齢を重ねたスギ原生林の存在
など際だった特徴をもっていることから,日本で初めて,自然遺産として登録されました(1993年)。
 これを機に,広く知られるようになった屋久島ですが,これまで,まとまった科学的成果が世に出たことがなく,そのギャップを埋めるべく本書は企画されました。
 内容構成にあたり大澤先生(専門は植物生態学)は,過去の豊富な野外調査の経験から,自然はもとより,現地の人々の生活・文化とのかかわりも含めて理解する必要を感じ,地形,気候,動植物,文化,観光,環境保護など総合的な視点から島の全体像を描くことに腐心されました(あとがき)。
 この貴重な遺産をこれからどのように維持・活用していくのか,課題は山積していますが,まずは本書を手にとって,島に対する理解を深めてもらい,未来への展望を共有してほしい,というのが,執筆者の方々の切なる願いです。(三尾)

【書評】
「山 2007年1月号」(日本山岳会)の「図書紹介」欄で、
瀧久仁人氏により「・・・屋久島研究の学術資料としても,また屋久島に関心があり屋久島を訪れようとする人のガイダンスとしても最適の資料である。また,自然保護に関心ある人には,ぜひ一読をお奨めしたい。・・・」と、ご紹介いただきました。

目次

第Ⅰ部 屋久島の気候と地形・地表動態
1.気候
 1.1 東アジアのモンスーンと屋久島の気候
 1.2 雨の島の降雨特性
 1.3 山頂付近の気候特性
2. 地質・地形
 2.1 屋久島北西部の花崗岩分布域の地形と地質
 2.2 地表動態と土砂災害

第Ⅱ部 屋久島の植物相と植生
1. 屋久島の植物相とその特性
 1.1 屋久島の植物相とその成立
 1.2 屋久島の着生植物
2. 常緑広葉樹の特性とフェノロジー
 2.1 熱帯・温帯移行部の温度環境と常緑樹の北限
 2.2 葉の寿命とシュート・フェノロジー
 2.3 常緑樹の葉の特性とリーフサイズ
 2.4 常緑広葉樹のシュートの生活史
 2.5 常緑樹の3つの芽タイプの構造
 2.6 芽の構造,分枝型と樹型
3. 屋久島の森林植生帯
 3.1 山地植生テンプレートからみた屋久島の位置
 3.2 屋久島の山地植生
 3.3 屋久島の垂直分布帯区分
 3.4 群落の地形分布,群落動態を考慮した植生帯区分
 3.5 植生帯の境界条件
4. 屋久島低地部と海岸の植生
 4.1 低地部植物相の特徴
 4.2 低地部における帰化植物の侵入と分布の拡大
 4.3 春田浜の植生
5. 屋久島の森林の分布と特性
 5.1 屋久島の森林の構造と機能
 5.2 地形に伴う植生パターン
 5.3 山地帯スギ林の構造と動態
 5.4 スギ天然林の初期再生
6. 衛星からみた屋久島の植生

第Ⅲ部 屋久島の動物相と生態
1. ヤクシカの生態と食性
 1.1 ヤクシカの森林環境利用
 1.2 白谷雲水峡のヤクシカの食性
2. 照葉樹林に住むヤクシマザルの採食戦略
3. 屋久島の鳥類相と垂直分布
 3.1 研究史
 3.2 鳥類相
 3.3 鳥類の垂直分布
4. 屋久島の昆虫相
 4.1 昆虫の種数
 4.2 ファウナの特徴
 4.3 昆虫の垂直分布
 4.4 種間関係と生態
5. 屋久島の森のダニ―ササラダニ類―

第Ⅳ部 人の暮らしと植生のかかわり
1. 屋久島低地部における自然利用と植生遷移
 1.1 低地部の土地利用と自然利用の生活誌
 1.2 奥岳と低地部のかかわり
 1.3 集落の成立と自然林の保護
 1.4 低地部における自然・半自然植生と遷移
 1.5 草本期の遷移
 1.6 先駆木本期から極相林への遷移
2. 屋久島国有林の施業史
 2.1 国有林経営の開始まで(明治・大正期)
 2.2 本格的国有林経営の開始(昭和初期)
 2.3 機械化(昭和初期)
 2.4 皆伐施業の展開(昭和10年代)
 2.5 復興資材生産と皆伐・人工造林(昭和20年代~30年代前半)
 2.6 高度成長期の施業(昭和30年代後半~40年代前半)
 2.7 自然保護への対応(昭和40年代後半~)
 2.8 現在の森林施業と森林の将来像

第Ⅴ部 世界遺産屋久島の利用と保全
1. 環境文化村構想とその後
 1.1 環境文化村構想とは
 1.2 構想その後
2. 屋久島におけるエコツーリズム
 2.1 屋久島におけるエコツーリズムの現状と今後の方向
 2.2 屋久島におけるエコツーリズムを地元ではどう考えるか
 2.3 屋久島におけるエコツアーの試みと現状
3. 公園計画と自然保護

第Ⅵ部 屋久島の人・歴史・未来
1. 屋久島の岳参り
2. 屋久島西部地区の変遷
3. 「学びの島」の歴史と未来

屋久島の自然と人―あとがきにかえて―
西部林道周辺地域と屋久島をめぐる近代年表
索引

執筆者紹介

【編集者】
大澤雅彦、田川日出夫、山極寿一
【執筆者(執筆順)】
松本淳、江口卓、山本啓司、下川悦郎、堀田満、田川日出夫、大澤雅彦、岩川文寛、相場慎一郎、朱宮丈晴、武生雅明、沢田治雄、揚妻直樹、揚妻-柳原芳美、市川聡、花輪伸一、山根正気、青木淳一、稲本龍生、小野寺浩、東岡礼治、大山勇作、松本毅、田村省二、山本秀雄、山極寿一
【写真提供】
日下田紀三、塚田拓

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