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医学統計学シリーズ 10 経時的繰り返し測定デザイン ―治療効果を評価する混合効果モデルとその周辺―
丹後 俊郎(著)
内容紹介
治療への反応の個人差に関する統計モデルを習得すると共に,治療効果の評価にあたっての重要性を理解するための書〔内容〕動物実験データの解析分散分析モデル/混合効果モデルの基礎/臨床試験への混合効果モデル/潜在クラスモデル/他
編集部から
*シリーズ「刊行のことば」
統計学はみかけの変動を示すデータの中に埋没している本当の姿を把握するための重要な科学の一分野であり, その考え方は現実に直面しているさまざまな課題を解決するために必要な科学的思考である. ここ20年の間に, 実際の問題解決をめざしたさまざまな新しい統計手法がコンピュータの進歩・普及とともに急速に進歩してきている.
本シリーズは基礎, 臨床, 公衆衛生から社会医学までの医学関連領域で必要とされる統計学的な考え方, 統計手法を豊富な実例とともにわかりやすく解説した「信頼できかつ役に立つ」書物を提供することを目指している. しかし, 「わかりやすく書いた」つもりの本が読者に「わかりやすい」と判断されるかどうかは別の問題である. 読者の嗜好もいろいろであり, 知識レベルもいろいろである.
一般に, 日本人の書いた教科書, テキストは正確に書こうという意識が強すぎるのか, はたまたユーモアに欠けるのか, 欧米の類書に比して面白味がなくかつ読みにくいという評判をよく聞く. 統計学も例外ではない. 確率論から始まって, 単回帰分析の初歩くらいまでをカバーしたほとんど同じ内容の, 数式中心の単調な教科書のなんと多いことか. 専門書といえども所詮「読み物」であり, 小説, 随筆のような迫力と面白さがある方がいいに決まっている. それでいて内容は学問の進歩を充分に反映した新鮮で信頼できる専門書・実用書である. 当然そこには著者の個性が強く光っていて, 読みこなしていくうちに知らず知らず「はまって」いくのである. 本シリーズはそのような読み物を提供したい. (丹後俊郎)
*本巻概要紹介
薬効は「予測不可能な個人差」により反応のばらつきがあるので,複数の患者を投与する群と投与しない群の2群に無作為に割り付け,実際にヒトに投与し治療結果の分布を比較して初めて効果が評価できる.本書では,この治療への反応プロファイルの個人差を変量効果で表現し治療効果を評価できる混合効果モデルを詳述するとともに,平均プロファイルを超える個人差に対応でき治療効果を評価できる潜在プロファイルモデルの紹介も行う.また,実践的理解が得られるようSASやWinBUGSのプログラムを適宜示しながら解説する.内容動物実験データの解析/経時的繰り返しデザインの分散分析モデル/分散分析モデルから混合効果モデル/混合効果モデルの基礎/欠測データにも柔軟に対応できる混合効果モデル/臨床試験への混合効果モデル/混合効果モデルへのベイジアンアプローチ/潜在クラスモデル/経時的繰り返し測定デザインの最適化と標本の大きさ
*医学統計学シリーズ・ラインナップ (2015年11月現在、既刊10点 各A5判上製)
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ベイジアン統計解析の実際 ―WinBUGSを利用して― 丹後俊郎・Taeko Becque 著
経時的繰り返し測定デザイン―治療効果を評価する混合効果モデルとその周辺― 丹後俊郎 著
目次
序
1. 経時的繰り返し測定デザインとは
2. 動物実験データの解析
2.1 解析例1
2.2 解析例2
2.3 解析例3
3. 分散分析モデルから治療効果を学ぶ
3.1 分散分析モデル
3.2 split-plot design
3.3 分散共分散構造のモデル
3.4 分散共分散が薬剤群間で異なる分散分析モデル
4. 分散分析モデルから混合効果モデルへ
4.1 問題の所在:混合効果モデルの導入
4.2 治療効果の不偏推定値
4.3 ベースラインデータ調整のANCOVA 型モデル
5. 混合効果モデルの基礎
5.1 適用例1:成長モデル
5.2 適用例2:薬剤効果の比較
6. 欠測データにも柔軟に対応できる混合効果モデル
6.1 適用例1:薬剤効果の比較の欠測データ
6.2 適用例2:成長モデルの欠測データ
7. 臨床試験への混合効果モデル||正規線形回帰モデル
7.1 完全ケースデータに基づく混合効果モデル
7.1.1 治療効果が時点によって変化するRM モデル
7.1.2 治療期間中の治療効果一定を仮定するRM モデル
7.1.3 治療群間での分散共分散が異なるモデル
7.1.4 ベースライン調整のANCOVA 型モデル
7.2 オリジナルデータの解析:欠測データを無視できる最尤法
7.2.1 RM モデル
7.2.2 治療群間での分散共分散が異なるモデル
7.2.3 ベースライン調整のANCOVA 型モデル
7.3 まとめ
8. 臨床試験への混合効果モデル||ロジスティック回帰モデル
8.1 治療効果が時点によって変化するRMモデル
8.2 治療期間中の治療効果一定を仮定するRMモデル
8.3 ベースライン調整のANCOVA 型モデル
8.4 まとめ
9. 臨床試験への混合効果モデル||Poisson 回帰モデル
9.1 治療効果が時点によって変化するRMモデル
9.2 治療期間中の治療効果一定を仮定するRMモデル
9.3 ベースライン調整のANCOVA 型モデル
9.4 まとめ
10. 混合効果モデルへのベイジアンアプローチ
10.1 無情報事前分布と信用区間
10.2 混合効果正規線形回帰モデルModel V のベイジアンモデル
10.3 混合効果ロジスティック回帰モデルModel IV のベイジアンモデル
10.4 混合効果Poisson 回帰モデルModel V のベイジアンモデル
11. 潜在プロファイルモデル||個人の反応プロファイルの分類
11.1 潜在プロファイルモデル
11.2 比例オッズモデルを組み込んだ潜在プロファイルモデル
11.3 潜在プロファイルの個数
11.4 グリチロン錠二号の臨床試験への適用
11.4.1 推定結果:潜在プロファイルモデル
11.4.2 推定結果:比例オッズモデルを組み込んだ潜在プロファイルモデル
11.4.3 R とOpenBUGS のプログラム
11.4.4 混合効果正規線形回帰モデルとの比較
11.5 うつ病の患者に対する認知行動療法の臨床試験への適用
11.6 まとめ
12. 経時的繰り返し測定デザインの最適化とサンプルサイズ
12.1 サンプルサイズの計算の基本方
12.2 正規線形回帰モデル
12.2.1 1 : T デザイン
12.2.2 S : T デザイン
12.2.3 ベースライン調整のANCOVA 型モデルの場合
12.3 ロジスティック回帰モデル
12.3.1 1 : T デザイン
12.4 Poisson 回帰モデル
12.4.1 1 : T デザイン
12.4.2 S : T デザイン
12.5 モンテカルロシミュレーションによるサンプルサイズの計算
12.5.1 ロジスティック回帰モデル
12.5.2 Poisson 回帰モデル
A. 欠測データ,欠測値
A.1 欠測データメカニズム
A.2 欠測データの補完
A.3 補完モデル
A.3.1 1 個の変数だけに欠測データがある場合の補完モデル
A.3.2 複数の変数に欠測データがある場合の補完モデル
A.4 Rubin のルール
A.5 Rubin のルールの妥当性:ベイジアンアプローチ
B. 最尤推定値と数値積分
B.1 混合効果モデルの尤度
B.1.1 正規線形回帰モデル
B.1.2 ロジスティック回帰モデル
B.1.3 Poisson 回帰モデル
B.2 混合効果モデルの最尤推定値
B.2.1 正規線形回帰モデル
B.2.2 ロジスティック回帰モデル
B.2.3 Poisson 回帰モデル
B.3 積分の評価
B.3.1 Laplace 近似
B.3.2 Gauss-Hermite 求積法
B.3.3 適応型Gauss-Hermite 求積法
B.3.4 より現実的な例への適用
文献
索引