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シリーズ〈ヤポネシア人の起源と成立〉 3 ヤポネシアの動植物ゲノム
内容紹介
歴史的に日本列島に居住していた人類集団,ヤポネシア人の起源と発展の歴史を紐解くシリーズ書。第3巻では人と密接な関係にある動植物を遺伝学的観点から解説。〔内容〕動物ゲノム(ニホンオオカミ,イヌ,ニワトリ,ネコ,ヒグマ,マウス)/植物ゲノム(ウルシ,ヒョウタン,アズキ,サトイモ,ソバ,アワ,キビ,イネ)
編集部から
序文より
近年のゲノム科学の劇的な発展により、人類が現在までの数千年間にどのように環境適応し、移動し、進化してきたかをより包括的に理解することが可能となった。ヤポネシアの先史時代の我々祖先、さらには彼らとともに列島に到来した様々な動植物の歴史的動態に関しての洞察が得られようとしている。
本書のおもなテーマは、日本列島を含む東アジアにおける人間の活動と密接に関連した動植物の進化である。旧石器時代の約4 万年前に現生人類が日本列島に到達したあと、住民は様々な動植物資源を広範に利用した。しかし、およそ1 万年前にはじまった新石器時代、東アジアの人々はイヌやアズキで代表される動植物とのかかわりを増大させることで人々の生活スタイルを大きく変化させた。東アジアの人々は大陸部において、イネ、アワ、キビなどに特に依存するようになり、8000 年前には中国大陸部で穀物農耕を開始した。およそ3000年前に、大陸での農業の進歩に影響され、湿田稲作システムを導入した渡来系弥生人の移住は、日本列島の動植物景観を大きく変えた。弥生時代以降、多くの栽培植物や家畜が大陸より持ち込まれたのである。そうした動植物の移動とともに、人類の意図とは無関係にヤポネシアに流入した種も多く存在する。
目次
第I部 動物ゲノム
第1章 ニホンオオカミゲノムからイヌの進化を解く 〔寺井洋平〕
1.1 ゲノムから見えた最初のピース
1.2 なぜディンゴ/NGSDがニホンオオカミゲノムを最も多く含むか?
1.3 ニホンオオカミの系統的な位置は正しいのだろうか?
1.4 更新世オオカミとニホンオオカミの関係
1.5 Leiden cの頭骨の謎
1.6 まとめ
第2章 ニワトリのゲノム解析 〔松田優樹、山田洋平、新村 毅〕
2.1 はじめに
2.2 全ゲノムから明らかにする日本鶏の起源と拡散の歴史
2.3 ニワトリの攻撃性の遺伝基盤
2.4 発声の遺伝基盤
2.5 まとめと展望
第3章 ネコのゲノム解析 〔松本悠貴〕
3.1 イエネコの起源と家畜化
3.2 家畜化後のイエネコ
3.3 日本への渡来
3.4 日本での普及
3.5 まとめと今後の展望
第4章 ヒグマのゲノム解析と動物地理的歴史 〔増田隆一〕
4.1 クマ科の中のヒグマ
4.4 最後に
第5章 マウスの核ゲノム解析 〔藤原一道〕
5.1 マウスとは
5.2 野生マウスの遺伝的分化と地理的分布
5.3 森脇バッテリー
5.4 野生マウスの遺伝的多様性
5.5 野生マウスの過去の集団動態推定
5.6 野生マウスの3亜種間の系統関係
5.7 東アジアの野生マウスについて
5.8 東アジアの野生マウスの遺伝的多様性
5.9 東アジアの野生マウスのY染色体と性比の歪み
5.10 日本列島の野生マウスの自然選択
5.11 まとめ
第6章 ミトコンドリアゲノムの解析とハツカネズミの自然史 〔鈴木 仁〕
6.1 はじめに
6.2 mtDNAの系統地理学的マーカーとしての活用
6.3 草創期のハツカネズミの自然史
6.4 東アジアのハツカネズミの自然史
6.5 CAS1 mtDNA亜系統の日本列島への移入
6.6 ヒトの生活環境を活用する小型哺乳類
第II部 植物ゲノム
第7章 日本ウルシと漆文化の起源 〔菅 裕〕
7.1 ウルシとは
7.2 植物学からみた日本ウルシの起源
7.3 日本の漆器と縄文時代
7.4 中国の遺跡における漆器
7.5 朝鮮の漆
7.6 日本におけるウルシと漆文化の起源
7.7 ウルシのDNA解析
7.8 ウルシ全ゲノムと次世代シーケンスによる集団構造解析
7.9 おわりに
第8章 ヒョウタンの起源と伝播のゲノム解析 〔遠藤俊徳、渡部 大〕
8.1 AIに訊いたヒョウタンの起源と伝播
8.2 ヒョウタンの生物学
8.3 栽培植物としてのヒョウタン
8.4 湯浅浩史ヒョウタンコレクションと農業生物資源ジーンバンクの標本のDNA解析
8.5 ヒョウタンゲノムの系統解析
8.6 栽培種ヒョウタンの系統と進化
8.7 最古の学術的記録はメキシコの洞窟遺跡のものだが、より古い記録が日本にあった
8.8 日本で発掘された古代ヒョウタンからのDNA抽出
8.9 古代ヒョウタンのDNA系統解析
8.10 ヒョウタン伝播経路とヤポネシア
8.11 ウリ科植物のゲノム解析
8.12 結び
第9章 アズキのヤポネシア起源仮説 〔内藤 健〕
9.1 ヤブツルアズキと栽培アズキ
9.2 アズキのゲノム解読
9.3 ゲノムから見た世界の栽培アズキ・ヤブツルアズキ
9.4 アズキの赤色の起源
9.5 おわりに
第10章 サトイモのゲノム解析 〔本橋令子〕
10.1 はじめに
10.2 サトイモ
10.3 弘法大師の石芋伝説
10.4 系統解析
10.5 おわりに
第11章 ソバのゲノム解析 〔フォーセット ジェフリ〕
11.1 世界におけるソバ
11.2 ソバはどういう植物か
11.3 栽培ソバの起原
11.4 ソバの栽培化や伝播に関する考古学的な知見
11.5 ソバの日本への伝播
11.6 ソバの栽培化に関する全ゲノム解析からの知見
11.7 ソバの伝播に関する全ゲノム解析からの知見
11.8 まとめと今後の展望
第12章 アワとキビのゲノム解析 〔里村和浩〕
12.1 ヤポネシアにおける雑穀栽培
12.2 栽培植物の起源
12.3 ユーラシア大陸におけるアワとキビの歴史
12.4 ヤポネシアにおけるアワとキビの歴史
12.5 まとめ
第13章 日本のイネ在来品種のゲノム解析 〔熊谷真彦、坂井寛章〕
13.1 日本の在来品種のゲノム
13.2 日本のイネ集団と世界の地域集団の関係
13.3 日本の温帯ジャポニカに見られた集団構造
13.4 日本の古代イネ─赤米のゲノム
13.5 イネゲノムデータの活用
13.6 おわりに─イネの古代ゲノミクスへ向けて
索 引

執筆者紹介
■シリーズ監修者
斎藤成也 国立遺伝学研究所名誉教授
■編集者
鈴木 仁 北海道大学名誉教授
長田直樹 北海道大学大学院情報科学研究院准教授
■執筆者(五十音順)
遠藤俊徳 北海道大学大学院情報科学研究院
熊谷真彦 農業・食品産業技術総合研究機構高度分析研究センター
坂井寛章 農業・食品産業技術総合研究機構高度分析研究センター
里村和浩 長浜バイオ大学バイオサイエンス学部
新村 毅 東京農工大学農学部
菅 裕 県立広島大学生物資源科学部
鈴木 仁 北海道大学名誉教授
寺井洋平 総合研究大学院大学統合進化科学研究センター
内藤 健 農業・食品産業技術総合研究機構遺伝資源研究センター
フォーセット ジェフリ(Jeffrey A. Fawcett) リージョナルフィッシュ株式会社,理化学研究所数理創造プログラム
藤原一道 国立遺伝学研究所遺伝形質研究系
増田隆一 北海道大学名誉教授
松田優樹 東京農工大学農学部
松本悠貴 アニコム先進医療研究所株式会社研究開発課,麻布大学データサイエンスセンター
本橋令子 静岡大学学術院農学領域
山田洋平 東京農工大学農学部
渡部 大 北海道大学大学院情報科学研究院

























